レンタルを始めた理由

剣道具レンタルを始めた思い

剣道を始める前に、あきらめてほしくない

 

私が剣道具レンタルを始めた一番の理由は、
**剣道人口を少しでも増やしたい**という思いからです。

 

剣道は、礼儀を学び、心を鍛え、仲間とともに成長できる素晴らしい武道です。
勝ち負けだけではなく、相手を敬う心、苦しい時に踏ん張る力、続けることでしか身につかない強さがあります。

 

だからこそ、剣道に興味を持ってくれた子どもたちには、できるだけその入口に立ってほしいと思っています。

 

ところが、剣道を始める時には大きな壁があります。
それが、剣道具の費用です。

 

先生方にとっては、
「防具は各自で買うもの」
という感覚が当たり前かもしれません。

 

もちろん、それは間違いではありません。
ただ、保護者の立場から見ると、子どもが続けるかどうか分からない段階で、いきなり高額な剣道具をそろえるのは大きな負担です。

 

実際に、ある中学校の剣道部では、体験会に20人近くの子どもたちが来たそうです。
しかし、学校から配られた「部活動で用意するもの」の一覧には、剣道具が10万円近くかかるように書かれていました。

 

その年、実際に入部したのは経験者の2人だけだったそうです。

 

この話を聞いた時、私は本当に悔しい気持ちになりました。

剣道に興味を持ってくれた子どもたちがいた。
体験会まで来てくれた。
でも、費用の壁を見た瞬間に、始める前からあきらめてしまったかもしれない。

 

これは、あまりにももったいない。

剣道が嫌いになったわけでもない。
稽古が苦しかったわけでもない。
まだ一歩も踏み出す前に、剣道具のことで入口が閉じてしまう。

 

そこに、ずっと悲しい思いがありました。

 

きっかけは、地元のご家族でした

 

当店は、武道具店です。
剣道具の販売や修理を行う中で、修理期間中に稽古に穴があかないよう、お客様にお貸しする剣道具を何台か用意していました。

 

最初から「レンタル事業を始めよう」と大きく考えていたわけではありません。
けれど、目の前で困っている人がいて、当店に使える剣道具がある。
それなら役に立てるのではないか。
そんな小さなきっかけから始まりました。

 

令和7年3月。
剣道具レンタルの初めての1台目が出ました。

 

地元のご家族でした。
3人兄弟の一番上のお兄ちゃんが、道場から借りていた面を使っていたのですが、その面の面金が折れてしまい、非常に危険な状態になっていました。

 

代わりの面も道場にはなく、個人で面を買いに来られたのです。

その時、まだホームページも何もない状態でした。
でも、ふと私は、
「レンタルもできますよ」
とお伝えしました。

 

すると、とても喜んでくださいました。
下にまだ2人兄弟がいるため、これから全員分の剣道具を買いそろえるのは大きな負担だったそうです。

そのままレンタルの剣道具を持ち帰っていただいた日のことを、今でもよく覚えています。

 

ただ商品が売れた、という感覚ではありませんでした。
「ああ、この仕組みは、誰かの不安を減らせるんだ」
と感じた瞬間でした。

そして半年後、今度は真ん中のお子さんもレンタルしてくださいました。

 

ご家族の中で、次の子にも剣道を始める道がつながった。

そのことが、私にとっては本当に大きな出来事でした。

レンタルが、入部の後押しになった

 

それから2か月後の令和7年5月。
近所の中学校の剣道部で、顧問の先生が子どもたちに、
「レンタルもあるから、剣道をやってみたい人は始められるよ」
と伝えてくださいました。

 

すると、保護者の了解も得られ、11人もの新入部員が入部しました。
そのうち7人がレンタル希望でした。

 

さらに翌年、令和8年5月には、隣町の剣道部で1年生が17人も入部しました。
そのうち8人がレンタル希望でした。

 

もちろん、レンタルだけが理由ではないと思います。
顧問の先生方の熱意、子どもたち自身の興味、学校や道場の雰囲気があってこそです。

 

それでも私は思いました。

もし「レンタルもあるよ」と言えなかったら、
この中の何人かは、剣道を始めていなかったかもしれない。

そう考えると、剣道具レンタルは単なる貸し出しサービスではありません。
子どもたちが剣道を始めるための、最初の不安を取り除く仕組みです。

 

先生が喜んでくれる。
子どもたちが剣道を始められる。
保護者の方は初期費用の負担を抑えられる。

みんな嬉しい。

剣道具レンタルは、剣道の入口を少し広げるための仕組みだと感じています。

初心者だけでなく、経験者や大人にも

 

レンタルは、初心者だけのものではありません。

熱心に稽古している子の中には、部活動用の剣道具を毎日自転車で道場へ持っていくのが大変、あるいは危ないという理由で、もう1台レンタルして道場に置いておく子もいます。

 

剣道具は軽いものではありません。
雨の日もあります。
暗くなってから自転車で帰る日もあります。
その負担や危険を少しでも減らせるなら、レンタルには別の意味もあると思っています。

 

また、大人用の剣道具も用意しています。

子どもが剣道を始めたことをきっかけに、お父さんやお母さんが剣道を始めるケースもあります。
親子で同じ道場に通い、同じ武道に向き合う。
それは、とても素敵なことだと思います。

ただ、大人がいきなり高価な剣道具を買うのも、やはり大きな負担です。

「まずはレンタルで試してみたい」
そんな方にも、剣道具レンタルを使っていただけたらと思っています。

安心して使っていただくために

 

レンタルを始めるにあたり、法的な準備も行いました。

リユース品のレンタルを行うには「古物商」の許可が必要です。
中古品を扱う以上、きちんとルールを守る必要があります。

 

当店でも、警察への届け出を行い、正式に古物商の許可を取得しました。

また、レンタルする剣道具は、できるだけ安心して使っていただけるよう手入れをしています。

面紐や胴紐は消耗品です。
切れてしまうと稽古に支障が出るため、できるだけ新品の紐を取り付けて納品するようにしています。

 

修理が必要な場合も、当店は武道具店です。
普段から剣道具修理に使っている工業用ミシンもあり、必要な補修にも対応できます。

 

ただ貸すだけではなく、武道具店として責任を持ってお渡しする。
そこは大切にしているところです。

衛生面も大切にしています

 

今の時代、清潔さはとても大切です。

以前、ある道場の先生から連絡をいただいたことがあります。
道場に長く保管されていた面を幼稚園の子が初めてかぶったところ、頬が真っ赤にかぶれてしまったというのです。

 

アレルギー体質だったのかもしれません。
あるいは、ほこりやダニなどが原因だったのかもしれません。

その先生はすぐに面をクリーニングに出し、大きな問題にはなりませんでした。

 

剣道具は、直接体に触れるものです。
特に面は、顔に触れます。
子どもに使わせるものだからこそ、保護者の方が衛生面を気にされるのは当然です。

 

だからこそ、レンタル品であっても、できるだけ清潔な状態でお渡しすることを大切にしています。

正直、自分のお店の剣道具が売れにくくなります

 

困ったこともあります。

レンタル剣道具が増えれば増えるほど、当店で剣道具を購入される方は少なくなります。自分で自分の首を締めています。

 

経営を考えれば、剣道具を買っていただく方がもちろん嬉しいです。
レンタルは、手間もかかります。
修理も必要です。
管理も必要です。
サイズ交換にも対応しなければなりません。

 

それでも、私はこの仕組みを続けたいと思っています。

なぜなら、剣道具が売れることよりも、
剣道を始める人が一人増えることの方が、私にとっては大きな喜びだからです。

 

もちろん、すべての方にレンタルをおすすめしているわけではありません。
長く続けることが決まっている方や、自分専用の剣道具を大切に使いたい方には、購入の方が向いている場合もあります。

ただ、これまでは「購入する」以外の選択肢がほとんどありませんでした

 

そこに、
「まずはレンタルで始めてみる」
という選択肢を作りたかったのです。

 

剣道を始める入口は、もっと広くていい。
そう思っています。

月々1,480円にしている理由

 

よく、
「セットで月々1,480円で大丈夫ですか?」
と聞かれます。

 

正直に言えば、もちろんこの金額で大きな利益が出るわけではありません
修理や初回サイズ交換にも対応していますし、手入れにも手間がかかります。

それでもこの価格で続けているのは、私自身が剣道をしてきた人間だからです。

 

剣道は、続けた人にしか分からない良さがあります。
最初は分からなくても、続けていく中で、少しずつ分かってくるものがあります。

 

だからこそ、始める前にあきらめてほしくないのです。

「やってみたい」
その気持ちがあるなら、まず一歩踏み出せるようにしたい。

 

剣道具の費用が理由で、その一歩が止まってしまうのは本当にもったいないと思います。

 

子どもたちが剣道を始めやすくなるように。
保護者の方が、少しでも安心して送り出せるように。
先生方が、部員募集の時に「レンタルという方法もあります」と伝えられるように。

 

剣道具レンタルが、誰かの「剣道を始めるきっかけ」になれば、これ以上うれしいことはありません。

 

剣道を始める子が一人増える。
道場に子どもの声が一人分増える。
稽古場に竹刀の音が一つ増える。

 

その小さな積み重ねが、これからの剣道を支えていくと信じています。